2009年07月23日

中村文昭詩集『オルフェの女 螢、海と空の帚木』感想文集5

詩人・渡辺めぐみさんからいただいた、
中村文昭詩集『オルフェの女 螢、海と空の帚木』の
感想のお手紙です。


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特に惹かれた御作品のタイトルを記させていただきます。

「眠り猫 ― in the dream ―」、「変容 metamorphosis」、
「誓い」、「異少年 ― 顔のない、ほんとうの顔 ―」、「口」、
「螢を掃く異少女」、「影法師 ― 自画像 A ―」、
「Auld Lang Syne」、「螢火」、「「私」と言葉 ― 自画像B―」、
「青年忌 ―回想―」、「「保多流」の家i」、
「「保太留」の家ii」、「再会 ―兄と弟―」、
「雲隠れ ―vanishing point―」、「Y日誌 ―老旅人の記録―」、
「掌」でした。

中味のことを申し上げます。
全行に線を引かせていただいた御作品があり、それは「口」、
「Auld Lang Syne」、「螢火」、「「保太留」の家ii」でした。

それから二重線を引かせていただき
その表現力の高さにうっとりと魅せられてしまったところが沢山あり
一部引用させていただきます。

 「ひとりはキノコ狩りの老詩人に処女膜?をやぶられたが
  帚のような尾をピンと立てた異少女の形見――帚猫を連れて
  富山の?薬売りになった」
 「ひとりは伊豆の?クラゲの海の 花屋の主になり、
  死んで生まれてきた童貞の種を高値で売りつづけた」
        (「異少年 ― 顔のない、ほんとうの顔 ―」部分)

 「「生」を死ぬことも叶わぬ尸は螢を吐きつづける」
        (「螢を掃く異少女」部分)

 「夜……夜の箱口 開かれ
  大洪水と人間狩り
  ノミらの集団自殺ありまして」
        (「再会 ―兄と弟―」部分)

 「女王蟻は常世の声でつぶやいた…鉛の口よ 「耳」ノ水平線ハ
  「目」ノ水平線ヨリ惨タラシイと。」
 「「世界」とはこのように滞る半端な記号でできているんだ、」
        (「Y日誌 ―老旅人の記録―」部分)

ほんの少し引用させていただいただけで私にはっきりわかりますのは、中村文昭という詩人は、寺山修司や吉増剛造型の一種の天才型の詩人であるということで、
正直に申しますとおっしゃっていることの意味をすべて読み解かせていただきながら拝読した訳ではないのです。

ただ次のようなことも強く思いました。
ここには社会の秩序を維持するために粉飾、加工を施されている物の見方というものを払いのけたときにあらわれる
今生の悲劇や生の摂理についてのすべて真理が描かれているのではないかと。
生命体の持つ本能というものがもともとグロテスクな性格を有し、
そのぶつかりあいも救いなどない闇のうねりであって、
しかしそこに生まれる瞬時の愛や死が美しくあればそれでよいのかもしれないと。
それは中村様が舞踏に携わり、身体ごと世界の変化を正確に受けとめ続けてこられた結果なのかもしれないと思いました。
身体は理性よりも正直でえげつなさを拒否することができないからです。

きわめて舞踏的だと思いながら感動したフレーズを引用させていただきます。

 「一体なにを箱の中で創造したというのか?
  太陽をつくりながら太陽からうまれた
  あなたの薔薇の秘密? ゴム紐よ
  かぎりなく「重力」から逃げつづけていくか
  宇宙の水平線がこの宇宙からとおざかっていくように――」    
        (「螢狩りの夜」部分)

私達が手にすることのできる真実は科学が進歩してもごくわずか、
しかし詩はそれを超えることができると思いました。

拙い感想で申し訳ありません。
またどこかでお目にかかる日を楽しみに致しております。


                2009.6.8 渡辺めぐみ


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中村文昭詩集『オルフェの女 螢、海と空の帚木』
http://home.catv.ne.jp/dd/ekosikai/books/orfenoonna_hotaru.html
☆この詩集は「秩父で遊ぶ chichibu de asobu」で
 中村文昭自身も朗読いたします。
http://home.catv.ne.jp/dd/ekosikai/info/info200907event.html
posted by えこし会 at 15:42| 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする